三菱地所パークス株式会社

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2023.10.23 メルマガ

いま、再開発施設の駐車場で何が起こっているのか?

現在、全国で160件以上の市街地再開発(以下、再開発)が進んでいます。
当社では、20年以上にわたって、再開発の駐車場設計コンサルティングを手がけてきましたが、近年の再開発では、タワーマンションを含めた再開発施設がスタンダードになっています。
今回は、タワーマンションをはじめ、「いま、再開発施設の駐車場で何が起こっているのか?」をテーマにお伝えします。

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タワーマンションと駐車場施設の課題

全国の再開発施設では、「住民がマイカーで自宅に帰れない」という現象が起こっています。
タワーマンションと商業施設などの複合施設において、一体型で整備された駐車場施設では、お買い物に来街されたクルマと、タワーマンションに住んでいる住民のクルマが駐車場内で交錯します。週末などの商業施設の来街ピーク時には、お買い物のお客様で駐車場入口は渋滞し、住民も駐車場入口で渋滞に並ばなければ我が家に帰れないといった問題が起こっています。
このような渋滞を未然に防ぐためには、駐車場の設計段階で渋滞が発生する可能性を検討し、設計上で実施可能な対策を検討する必要があります。住民専用の駐車場出入口や、分離された専用車路を設計できれば良いのですが、敷地条件など、制約条件の多い設計与件の中では困難な場合が多いですね。私たちのコンサルティング業務では、基本計画や基本設計など現設計の中で現実的に可能な設計上の改善策を提案する事例が少なくありません。例えば、地下駐車場の最下層に住宅用駐車場がある設計において、住民が可能な限り円滑に入出庫ができる改善を提案するといったケースが挙げられます。
また、最近では、基本計画や基本設計フェーズで「駐車場オペレーション計画」を策定し、設計では解決できない駐車場運営の課題を「駐車場オペレーション」でどこまで解決できるのかを検討するコンサルティング業務も増えています。
駐車場予約システムの活用や、駐車場満空情報によるオフピーク入庫など、システムによる解決策を提案・検討するケースもあります。

商業施設と駐車場施設の課題

コロナ禍を経たいま、各地の駐車場施設の渋滞状況が変化しています。
商業施設では、店舗構成を刷新する狙いから、出店テナントの入替えが定期的に実施されていますが、 ある特定のテナント出店をきっかけに従来よりも入庫待ち時間がより長くなる傾向がみられるようになりました。
当社がコンサルティング業務を実施した事例では、食品スーパーとキャンプ用品店を新規テナントとして迎え入れた結果、入庫待ちの滞留長が以前よりも長くなりました。
さらに人気の高い商業施設となったことで、あらたなテナントの出店が相次ぎ、さらに来店するクルマが増えたというテナント構成上の商業施設運営の好循環から生まれた課題です。
このようなテナントの変更が渋滞につながった原因としては、コロナ禍で外出を控えていた人たちが集中したこともあると思いますが、コロナ禍で人々の生活様式、趣向の一部が変化したことも関係しているのではないかと推測しています。
このような「渋滞」という課題の解決策として私たちは、以下のような複数ステップで解決策を提案します。

 ① 出庫を促進できる対策(入庫できるように車室を空ける)
 ② 入庫したクルマがスムーズに駐車できる対策(場内で滞留を防ぐ)
 ③ 前面道路での入出庫の障害を解消する対策
 ④ 駐車無料時間サービスの改善(滞留時間の適正化)
 ⑤ 分散入庫と分散出庫方法の検討
 ⑥ サイン計画の改善
 ⑦ 実施可能な設計上の改善

新しい開発においては、基本計画や基本設計が進捗した後に出店テナントの業態構成などを検討していくステップが一般的であると思いますが、可能であれば、設計段階でどのような業態のテナントが出店するのかを計画した上で、入庫のピークを予測し、設計に反映できると渋滞を防ぐ一助になるのではないかと考えます。
当社では、さまざまな商業施設の駐車場運営を手掛けていますので、出店する店舗の業態によって、どれぐらいのクルマが来街されるのかをシミュレーションするお手伝いをすることもあります。

公益施設と駐車場施設の課題

再開発では、市民センターや図書館など、自治体の公益施設との複合施設となる場合があります。最近では小学校が再開発施設に設置された事例なども記憶に新しいところです。
このような再開発における駐車場施設では、「無料駐車サービス」の設計が重要になります。
一般的に商業施設などでは、お買い上げ金額に応じた「無料駐車サービス」を提供しますが、そのサービスコストの負担は、事業者側から各店舗へ請求する場合と、テナント賃料に含まれた設定とし、各店舗は負担をしない場合に大別されます。
公益施設利用において、自治体が「無料駐車サービス」負担をしない場合は、駐車場の収入面と、駐車場の稼働状況に影響を及ぼすことがあります。
公益施設の利用者で駐車場の稼働が高まり、商業施設などに来街されたクルマが満車で駐車できなくなる可能性はどれぐらいあるのか、また、自治体がサービスコストを負担しない場合、駐車場の収入面にどれぐらいの影響があるのかなどを事前に検討する必要があります。公益施設を利用するクルマの台数を予測し、実際に発生する「無料駐車サービス」のコストがどれぐらいの額になるのかを算定し、駐車場収入への影響度を具体的に検証するという流れになります。
さらに、自治体が駐車場を保留床として一部所有するケースの場合、自治体の保留床である駐車場部分を他の用途で来街されたクルマにも利用を許可するのか等、さまざまな検討が必要になります。許可しない場合は、自治体の保留床である駐車場部分は公益施設専用となり、空き車室があっても他の来街目的のお客様は利用できず、駐車場の稼働率は低下します。
当社では、「無料駐車サービス」設計による駐車場収入の変化に関する検討業務や、駐車場の稼働状況を予測し、駐車場施設にどのような負荷がかかるのかを検討する業務も実施しています。